平成29年 予備試験 口述試験 再現 刑事
平成29年口述刑事再現
2日目午後11番目
所要時間15分程度
結果121点
主査:BはAに対して、自殺したいから手伝ってほしいと伝えた。Aはこれに協力し、毒薬をBに手渡し、Bはこれを服毒して死亡した。まず、自殺に犯罪は成立しますか。
ぼく:しません。
主査:なぜですか。
ぼく:違法性がないからです。
主査:違法性ってなんですか。
ぼく:(うそ…だろ?)社会的相当性をかいたものです。
主査:んーと、何が違法なのかな。
ぼく:行為がです。
主査:結果は関係ないと。
ぼく:いえ、結果も関係なくはないです。
主査:んー、というと?
ぼく:法益侵害に対する因果性がある場合も、違法性の判断に関わってきます。
主査:ん~??(主査、副査ともに首をかしげている。)
ぼく:(ぼくも自分で何言ってるか分からないよ(^^♪)
主査:では本件においてAには何か犯罪は成立しますか。
ぼく:はい、します。
主査:何罪?
ぼく:自殺幇助罪です。
主査:一般的に共犯って実行者の行為に違法性がないと成立しないよね。
ぼく:この場合は、人の生命に対する否定的な関与をした、ということ自体に違法性が認められるので問題ありません。
主査:一般的な共犯の場合とは違うと。
ぼく:はい、独自の違法性が認められます。
主査:ふーむ(納得している様子)。自殺幇助罪って、殺人罪と比べて刑が重いとか軽いとか分かる?
ぼく:軽いです。
主査:なんでなんだろう。
ぼく:責任が減少しているからです。
主査:責任の減少。
ぼく:死ぬ人が承諾しているわけですから、普通に殺す場合よりかは非難ができないと思います。
主査:うーん、違法性は関係ないのかな。
ぼく:それも関係あります。
主査:さっきの違法性の意義から言うと、どうゆうふうに関係あるかな。
ぼく:死ぬ人が承諾しているわけですから、普通に殺す場合と比べて社会的相当性の逸脱の程度が低いと思います。
主査:じゃあ次の事例にいきます。全く別の事例ね。
ぼく:はい。
主査:3歳の子供がお母さんに対して、「僕死にたいから殺してよ」と言いました。それを聞いて母親は子供に毒を渡し、子どもは服毒して死にました。母親には何罪が成立しますか?
ぼく:その場合は……殺人罪が成立します。
主査:さっきとは何が違うのかな。
ぼく:子どもが3歳ということですので、事理弁識能力を欠いており、死ぬということに関して真意に基づく承諾があるとはいえません。
主査:ふ…む。じゃあ次の事例ね。彼氏も一緒に死んでくれると思って、女性は自殺した。しかし、彼氏は心中する気などなかった(詳細は忘れたが、典型的な追死の偽装の事例だった気がする)。彼氏は何か罪責を負いますか。
ぼく:この場合も殺人罪です。
主査:どうして。
ぼく:彼女は彼氏が一緒に死んでくれると思ったからこそ自殺に踏み切ったわけで……死ぬということに関して、意思決定の過程に瑕疵があり、やはり真意に基づく承諾があるとはいえないからです。
主査:じゃあ次の事例ね。暴力団の親分と子分がいます。子分は失態を犯したため、けじめをつけるため死にたいと考えていたが、残される家族のことがきがかりであった。そこで親分は、俺が家族の面倒を見るから安心して逝けよ、という趣旨のことを言った。そして、子分は自殺した。親分に何か犯罪は成立しますか。
ぼく:この場合も殺人罪が成立します。
主査:なぜ。
ぼく:この場合も意思決定に瑕疵があり、真意に基づく承諾がないからです。
主査:意思決定に瑕疵がある場合、全部殺人になっちゃうのかな。
ぼく:いえ…全部ということはないと思います。
主査:というと?
ぼく:うーん、意思決定の瑕疵が軽微な場合です。
主査:たとえば?
ぼく:そうですねえ…うーん…たとえば先ほどの事例でいえば、親分が子分の家族に裕福な生活を保障してくれると思ったから自殺したのに、実際は一般家庭並みの生活しか保障しなかったというような場合です。
主査:ほお、なるほど…なんでそれは意思決定の瑕疵が軽微なのかな?
ぼく:やはり子分と親分との間の合意といいますか、その取り決めの本質は、子分の家族が生きていくうえで必要な生活を保障するということにあったと思いますので、一般家庭並みの生活を保障している以上、意思決定の瑕疵が軽微だと考えます。
主査:ふーむ…でも子分からしたら裕福な生活を保障してくれるからこそ自殺したんだ、ということもあるかもしれないよね
ぼく:うーん、そうですね、もちろんそのように当事者の主観的な事情が影響してくることはあると思います。
主査:ふんふん。じゃあ公判の話に入っていくんだけど、最初に起訴状を朗読するよね。起訴状とか?は予め被告人に送達されて被告人はその中身を知っているわけだけど、なんでわざわざまた起訴状朗読なんてするのかな。
ぼく:うーん、直接主義の要請だと思います。
主査:なんでそれが関係してくるのかな(明らかに答えが間違っていたことが態度から一目瞭然)。
ぼく:うーん、やっぱり関係ないような気が…(許しを乞うような笑みを浮かべて)。
主査:ちょっと違いそうだよね。
ぼく:うーん、口頭主義の要請です。
主査:それもあるんだろうね。他にはないかな?
ぼく:うーんそうですねえ…
主査:裁判って傍聴できるよね。これってなんでだっけ。
ぼく:!公開主義の要請からです。
主査:それと起訴状朗読はどう関係するのかな。
ぼく:公開のもと、適正な手続きが行われているということに意味があります。
主査:うん。じゃあ次ね。(以下、詳細はわすれました)。被害者のことに関して知られたくないって場合に、どうゆう制度があるか分かる?
ぼく:被害者特定事項の秘密というようなやつです(自信なさげに)。
主査:秘匿、だね(なんかにやけている)。
ぼく:あ、そうでした!
主査:この制度を利用しようとする場合、被害者は何をすればいいの?
ぼく:裁判所に申し立てます。
主査:その前に何かする必要ある?
ぼく:検察官に申し立てます。
主査:検察官はそれでどうするの?
ぼく:裁判所に申し立てます。
主査:うん、通知するんだけど、このとき裁判所に対してどんなことを言うかわかる?
ぼく:秘匿する必要性などについて言います。
主査:(にやけながら)あとで条文を確認しておいてもらいたいんだけど、意見を付して通知するのね。
ぼく:yes your highness
主査:(ここらへんも記憶があいまい)。じゃあ次ね、黙秘権ってあるよね。何条に書いてある?
ぼく:黙秘権ですから…311条1項です。
主査:うん、どんな内容?
ぼく:自己の意思に反して供述を強いられないというような内容です。
主査:憲法にも同じような条文あるけど、どんなこと書かれてあるかわかる。
ぼく:(自信なさげに)自己が罪責を負うような事実については話す必要はない、というような内容だったと思います。
主査:(にやけながら)自己に不利益な供述を強要されないって書いてあるんだよね。
ぼく:(こちらも笑みを浮かべて)あ!そうでした。
主査:この2つって同じことを規定したものかな?
ぼく:ちがいます。
主査:どう違う。
ぼく:憲法の方は、自己負罪、自分が罪を負う危険性があるような事実についての黙秘権です。刑訴法の方は……(現場で思いついた感を出すため、わざと少し考えるふりをして)包括的です!
主査:うん。(ここらへんうろ覚え)証人は自己負罪特権のほう、被告人は包括的黙秘権だけど、この違いはなんだろうね。
ぼく:被告人はいままさに刑罰を科されるかもしれないという立場にいるので、包括的に黙秘権を保障しないと防御権を実質的に保障できないからだと思います。
主査:証人は一般的に供述義務があるよね?そこから何か分からないかな。
ぼく:真実主義の要請です。
主査:真実主義ね。真実主義って被告人にとっては有利?不利?
ぼく:不利です。あ、いえ、有利な時もあると思います。
主査:たとえば?
ぼく:冤罪のときなどです。
主査:ふーむ…(主査・副査、顔を見合わせる)うん、これで以上です。
ぼく:ありがとうございました。失礼します。